海外エンジニア採用でトップランナーの楽天さんを取材してきました! 後編
前回からの続き
前回は楽天さんが海外エンジニア採用をはじめるキッカケや、実際、どのような採用活動をしているのかに加え、受け入れのときの方針のお話でした。
happy-hiring.hatenablog.com
今回は海外エンジニア採用でのベンダー選びや学生の活動、そこから見えてくる日本との違い、そして採用方針の大胆な変更があったことを、お届けします!!
取材に応じて頂いたHRご担当
- 楽天株式会社 グローバル人事部 採用推進課 エンジニア採用グループ ヴァイスマネージャー
小山 浩平 さん
では、早速、インタビュー内容をお届けします!! (インタビュアー:広瀬)
海外の就活と比べて、ここが変な日本の就活
海外採用を始めたときの学生の集め方
ーーちょっと前に戻るのですが、プロモーションではキャリアセンターに飛び込んで、大学で学生を紹介して下さい、とお願いするような感じですか?
小山 基本はケースバイケースで、欧米の場合、キャリアセンター主催のキャリアフェアというのがあるので、そこに参加するよう案内されたり、自社説明会をやりたいので、というと会場を貸してくれたりと、色々です。
あと、海外の場合、大学のキャリアセンターがしっかりしていて、そこが全く日本と違います。
なかでも、インドや中国の場合は、大学とのコネクションにかなりの労力が割かれるので、極力、現地に詳しいエージェントさんにお願いするようにしています。
とはいえ、事前のメールではスムーズに進んでるように見えても、いざ現地にいってみると、会場すら予約されてなかった、ということも何度かありました。
ーーうわー。。。ツラい。。。ちなみに、そういったベンダーやエージェントの選定はどのようにされているのですか?
小山 色々試してみて、今はある程度決まってきました。もちろん、そこまでに色々と失敗がありましたが(笑)。
国内採用以上に、僕たちもわかっていない事が多いので、信頼できるベンダーさんやエージェントさんを選ぶということは非常に重要だと思います。
ーーやってみないとわからない部分なんですね
小山 そうです。あと会社単位ではなく、担当レベルでも結構、差がありますね。
日本の就活は特殊
ーー現地のベンダーならではの採用サービスなどありましたか?
小山 先程もありましたが、結局、アメリカがどう、シンガポールがどう、ではなく海外の就活は大学のキャリアセンターが中心なんです。
その意味では、日本が特殊なんです。就活の仕組みもそうですし、時期もそうです。
そもそも、本来、採用のステークホルダーには、学生-大学-企業 だけで決めればよいのに、そこで経済団体や就職ベンダーが決めているのが特殊な要因になっていると思っています。
ーーということは、海外の学生たちは数を絞った就職活動をしているのでしょうか?
小山 数という点では圧倒的に違います。
それは、終身雇用ではない、というところも背景としてあります。
「2~3年ごとにキャリアアップ」「合わなかったら、次」という意識があるように感じます。
ーーなるほど、ジョブホップすることが前提ということですね
小山 あと、、これはぜひ書いていただきたいことなんですが、 "就活で嘘をつくのは日本人だけ" です(笑)。
ーーへーーー、そうなんですね。海外の人はオファー出して、コミットしたら辞退しない?
小山 そこに至るまでに、「この会社を受けているからここまで待ってくれ」 「こういう理由で給料はこれだけ欲しいから上げてくれ」 というディスカッションはありますが、基本はそうです。
日本人だけが、「御社だけが第一志望です。必ず入社します」 と言っておきながら、そこから手のひらを返したように、電話で 「辞退します (ガシャン)」 というのは (笑)
Rakuten Way な "通年採用"
入社時期だけではなく、職種、給与も変わる
ーーなるほど。海外の場合、新卒でも給与のことを要求してくるんですね。。。ん?、ということは、個々のスキルによって給与も変わるんです?
小山 はい、完全にそうです。
個々人のスキルによって、楽天ではTECH職種だけですが、給料は変わります。
ーーえ、そうでしたっけ?
小山 一括採用を止めた時点で、そうなりました。
ーーあらら、、では、私は "一括採用から通年採用" というのをだいぶ勘違いしていましたね。。
小山 そうでうすね。この通年採用にする、ということが理解されてないケースもあるんです。。ちなみに、どういった内容かご存知ですか?
ーー一括で入社時期が決めっていて、入社することを止める、ということですよね?
小山 それもあります。
もう二つあり、その一つがポジション別採用です。
一括採用では、入社して後に、研修期間を経て配属が決まっていくのですが、入社前にポジション別に採用する、というものです。
整理すると、通年採用に変わって、具体的に変わった点は3点あります。
- 入社時期はいつでも
- ポジションを選択して応募
- 給与は一人ひとりのスキルに応じて変動
この3つです。
ーーということは選考基準も部署別に変わる、ということですね?
小山 そうです。
それも含めて、部署の開発担当役員がオファーまで出しています。
ーーなるほど! となると、どういった経緯でそうなったのでしょうか?
小山 2014年に採用比率の87%が外国籍になったときに、今までの一括採用では受け入れが困難になってきました。
例えば、ある海外新卒エンジニアが卒業後、1年近く待ってから、入社する、という事態が起こりました。 また入社後、どんなポジションにつくのか不透明だと、採用で競り負ける、ということも発生してきました。
それで一括採用を止めて、通年採用に切り替えました。
グローバル採用とエンジニア採用は分けて考えたほうがよい
日本国内のエンジニア採用はレッドオーシャン
ーーでは、質問を変えて、小山さんの観測範囲でOKなのですが、エンジニア採用を海外に変えて、これはよかったなぁと思うようなことはありましたか?
小山 そうですね、、、
個人的には、全く英語が使えなかったところから始めて、「グローバルにエンジニアを採用するとは」 みたいな話ができるようになるほど視野が広がったのは本当にありがたかったです (笑)。
HRの観点では、結構、皆さん海外採用は「難しい、コストが高い」と思われがちなのですが、実は真逆で「日本よりも採用しやすく、コストも安い」という現状があります。ここは声を大にして伝えたいですね。
最近では、ベトナム、韓国などでは英語もできて、日本語が出来る人材も増えています。
その一方で、国内のエンジニア採用はレッドオーシャンなので、その中で各社、各ベンダーが工夫しすぎて、何をやっているのか分かりにくい状況です。
ーー確かにトリッキーにはなってきています。
小山 海外採用の場合、ブルーオーシャンで、紹介したようなパッケージで、どストレートな採用のやり方ができます。
採用活動もプロジェクトベースに変わった
小山 また、日本だけで採用活動をやっていたとき(筆者注: 新卒採用)は、接触から入社まで2年掛かりでやるもんだ、という先入観があったのですが、海外採用だとHRの活動も実質数か月で終わります。
このため、プロジェクトベースで活動できるので、成否もわかりやすいですし、モチベーションも維持しやすいです。あと、採用の捉え方が変わりました。
ーーなるほど! それはどのように変わったのですか?
小山 先程の通り、プロジェクトベースになったことで、採用活動はプロジェクトマネジメントだと考えるようになりました。
プロジェクト同様に変化が激しく、その変化を見通しながら、さらに現地で採用活動以外の事案にも臨機応変に対応しなければならないことがあります。
それだけに、プロジェクト終了後にもノウハウを溜めていっています。
ーーなるほどー。例えば、どんなノウハウがあるのですか?
小山 そうですね、、例えば現地で洪水が発生したらどうするとか、後は細かいものではインドが一番寒い、とか(笑)
ーー(笑) それは詳しく聞いてみたいです。
小山 皆さん、インド出張というと、暑いというイメージがあるのでTシャツ短パンとかで行くじゃないですか。でも面接とかは一日中ホテルでやるので、クーラーがガンガンに効いて、クソ寒いんです。
なので、インドに出張に行くときは「ジャケットと長いパンツを持っていってください」とか。
あとは採用救急箱とか。
海外出張時はやはり体調不調が一番の敵なので、暑い地域から寒い地域まで対応できるように、一通り揃えていて、歯磨きも出来ない、お風呂に入れない、という環境もあるので、救急箱には体拭きシートとかブレスケアも一杯入ってます。
グローバル採用とエンジニア採用とを一緒に取り組むこと
ーーでは、終わりに近付いていますが、海外エンジニア採用に取り組むHR、企業にアドバイスがあればお願いします!
小山 海外エンジニア採用って、厳密に言うと、グローバル採用とエンジニア採用と2つの要素が含まれています。
グローバル採用というのは、社内の仕組み、例えば、ビザとか食べ物や宗教など、そういったところから受け入れを考慮して進めていくということを指しています。
一方でエンジニア採用は、市場価値やスキルなど基準を持っておく、ということが必要です。
ゴチャッとやってしまうと、プロジェクトが失敗することも多いので、分けて考えたほうがよいです。
楽天は日本語が話せるエンジニアも募集中 !!!
ーーでは、最後に言いたいことや、宣伝があれば
小山 今までの話を全否定するような話ですが (笑)、実際、日本語が必要なポジションもたくさんあるので、海外籍の方だけでなく日本人エンジニアも絶賛募集中です !!!
また、こんなグローバルな採用に関わってみたいリクルーターの方からのご応募もお待ちしています!
ーーでは、今日は貴重な取材、ありがとうございました!!!
小山 ありがとうございました!!!
ふりかえり
今回は19のエンジニア募集チャネルの中には入れていなかった、新しいチャネル、海外採用について、楽天さんの取り組みを取材しました。
自社の環境、先の見通しから果断に決断し進めていきながら、出て来る問題に対して、柔軟に解決し、次に繋げている、というところがとても印象的でした。
プロジェクトで採用を考える、というのは、まさしくその通りですね。
その一方、先駆者ならではの試行錯誤やノウハウをこれだけ公開する、ということはあまり無く、そのご厚意に感激しながら、やはり楽天さんの底に流れているのは、OSSのハッカー文化なのかも知れません。
小山さん、楽天さん、本当にありがとうございました!!
海外エンジニア採用でトップランナーの楽天さんを取材してきました! 前編
取材にあたって
狙いみたいなもの
19の募集チャネルには入っていないものの、海外 というチャネルも国内企業からするとあるだろうと考え、楽天さんに取材を申し込みすると、"もちろん、OKですよ!!" とご快諾頂いたので、早速行ってきました
取材の狙い:新しい募集チャネル:海外採用 の施策を取材したい
取材に応じて頂いたHRご担当
- 楽天株式会社 グローバル人事部 採用推進課 エンジニア採用グループ ヴァイスマネージャー
小山 浩平 さん
では、早速、インタビュー内容をお届けします!!
(インタビュアー:広瀬)
海外エンジニア採用のはじまりは英語公用語、、ではなく、留学生採用から
留学生採用がキッカケでインド、中国からスタート
ー-改めて、海外採用に関する取材のOK、本当にありがとうございます!! 今日はよろしくお願いします!
小山 よろしくお願いします。
ー-さて、早速、海外採用をはじめたキッカケから伺いたいと思うのですが、、、これはやはり英語公用語からですよね!?
小山 それが違うんです。最初に、楽天として海外での採用活動をしたのが2008年、その採用した方々が入社したのは2009年なんです。ですので、英語公用語 (筆者注:英語公用語を宣言したのは2010年) より前なんです。
ー-え、、? となると、海外採用のキッカケはなんだったのでしょうか?
小山 最初に訪問したのはインドと中国なのですが、そのきっかけとしては、当時楽天の開発部の役員に中国の方がおられたり、楽天を辞めてインドで人材ビジネスを始めた方がおられたことがきっかけであったと聞いています。
また、当時留学生の採用も一般的になってきた頃で、楽天社内でも、今ほど多くはありませんが、様々な国籍の方にもご活躍いただいておりました。当時の上層部にも、「もっと世界の優秀な方と出会いたい」という強い想いがありました。
ー-へー、橋渡しになる人が社内にいて、インドと中国での採用から始められた、ということなんですね?
小山 そうですね。
英語公用語は留学生採用がきっかけ
ーそこからドドーンと海外採用、といったのですかね?
小山 いえ、しばらくは中国とインドが中心の海外採用でした。ドドーンといくのは、2014年ぐらいからですね。
で、実は2009年に最初にインドからご入社頂いた方々が、来日後わずか3ヶ月後程度で、日本語で日常会話できるほどに上達していたことに社長の三木谷が驚き、それがきっかけで楽天の英語公用語がスタートしました。
ーーえー!?
小山 インドの方が3ヶ月で日本語をマスターできるのなら、日本人もちょっとやれば英語をマスターできるはずだ、となったんです。またそれによって日本人の内向き志向や社員の意識を変えたかったと三木谷は著書でも語っておりました。
ーーそれが背景だったんですね!?
小山 そうなんです。今の楽天では世界中の方々と英語で仕事をするという事は珍しい事ではないのですが、5~6年前は新鮮な驚きだったんです。
2010年に英語公用語化を宣言し、実際に2012年から英語公用語化がスタートしました。
それに伴い、入社要件としてビジネスレベル以上の英語力(TOEIC800程度)が求められるようになりました。
日本で採用できないほどのエンジニアを求めて
欧米の大学のキャリアセンターに飛び込み営業!?
ーーそのTOEIC基準ができたことが影響して本格的に?
小山 もちろん元々の英語化の背景として、世界中から優秀なエンジニアを集めることが目的の一つではありましたが、「ビジネスレベルの英語力をもったエンジニア」となると日本国内では対象者が一気に少なくなったことも事実です。
その結果、エンジニア採用において海外比率がどんどんと増え、2014年当時で採用数の87%が外国籍を持つエンジニアが入社しました。国の数で言うと、20カ国になりました。現在では72か国の方が楽天で働いています。
ーーこの2014年当時は欧米も含め、全世界に採用活動を行っていたのですか?
小山 引き続きインド、中国からご入社頂く方が割合としては多かったですが、ボストンキャリアフォーラムに出展したり、大学のキャリアセンターに直接飛び込みでコンタクトを取るなど、欧米での活動も拡大し始めていました。
ーー実際、大学のキャリアセンターコンタクト取るとか、ツラいですよね。。
小山 お察しの通り (笑)。
その当時、私はエンジニア採用に異動してきたばかりで、当然英語を使った仕事の経験も全くありませんでした。1通のメール書くのに3時間かかることもザラでした(笑)
当然、返信が来ても理解するのにも時間がかかるし、とにかく英語に苦労した記憶しかありません(笑)
ーーうわー、大変だ。。今はバルセロナのスポンサーになるなど、ブランドイメージはあると思うのですが、その当時は...?
小山 はい(笑)。
当時は欧米トップ大学のキャリアセンターの方にはほとんど社名を知られていませんでしたので、まずは楽天について説明するPRメールを送ったり、実際に当時のエンジニア採用の責任者が世界中のトップ大学を回ってキャリアセンターの方とご挨拶したりしていました。
日本にいないぐらいのエンジニアを採用する!!
ーー当時からすんなり海外採用することは社内で浸透したのですか?
小山 色々ありましたが、当時の開発部門のTOPや採用責任者の方が強い想いをお持ちであったことが大きかったと思います。
その当時、社内外で「なぜ海外で採用するのか(日本企業なのになぜ日本で採用しないのか)」という質問を多々頂いたのですが、当時の説明事項としては、
という内容でした。
とにかく「優秀な人を採用する」という事が一番の目的でしたので、ある程度コストを度外視してでも、優れた人を採用することにこだわっていました。
今は、通年採用からポジション別採用に移行したり、海外採用の知見もたまってきたことあり、その当時からコンセプトややり方は多少変わってきたところはあります。
ーーそれはもうちょっと後で、詳しく聞きたいところですね。 では、そういったことをやり、最初から結構人数は採用できたのですか?
小山 日本にいないぐらい、ということで世界ランクTOP20の大学を一つの目安としていたのですが、やはりMIT、ハーバードなど欧米系からの採用は難しかったですね。
ただシンガポール、香港などにも同じぐらい優秀な学生が集まる大学があり、そちらからはある程度の数を採用できています。新卒の採用全体の中でも、TOP20の大学の割合は増えてきています。
海外エンジニア採用の Rakuten Way な選考
1日間の選考でオファー (内定通知) までやる
ーーそうやって集めてきた学生を、どのように選考されていたのですか?
小山 海外で採用する際には、基本2回、訪問しています。
まずプロモーション(説明会)で1回、そこから約1か月後に選考のためにもう一度訪問します。
面接の際には、できるだけ現地で最終面接、オファーまでを現地で実施しています。
ーーオファーを出す、ということは最終決済者も現地に?
小山 はい。都度、採用ポジションの最終決済者の方にも必ず同行頂き、選考を1日で終わらせる、ということを心掛けています。
"オンラインで選考" の失敗
小山 「現地でオファー」に拘るのには理由がありまして、、、
実はかつて、一括採用からポジション採用に移行した際に、選考に関わる人数が増えたため現地で面接することをあきらめた事がありました。
現地での説明会だけを実施して、「後はSKYPEで面接するからHPから応募してね、、、」というやり方だったのですが、応募がガクッと減ってしまいました。
ーーそれはやはり志望度のようなものが低くなってしまった、というのが原因でしょうか?
小山 それもあるでしょうし、ポジション(部署)が多すぎて選べない、ということも影響しているのかなと思っています。
正直、海外の応募者は楽天のサービスを使ったこともない方がほとんどだと思いますので、楽天の多種多様のポジションやサービスの中から一つを選べと言われてもよくわからなかったのかと思います。
そういった背景もあって、2016年から1カ国1ポジション(部署別)採用というやり方を導入しました。
例えば、楽天市場の採用は今年はベトナム、と決めて現地では楽天市場のプロモーションのみを行うというやり方です。
1カ国1ポジション(部署別)採用へ
ーーそれはどういうものなのでしょうか?
小山 楽天全体の採用数としては、新卒では毎年100名程度なのですが、部署ごとにみればだいたい5名前後なので、1カ国で採用活動を行えば、だいたいその人数は充足できます。
なので、まず採用しようとする部署が全社で70程度あるので、次年度の予算策定のタイミングで、全部署からヒアリングを実施し、採用予定数や募集ポジション、必要な要件などを確認します。
その上で、例えば、"楽天トラベルは今年は香港で採用をやってみませんか? 香港の特徴としては応募人数も多く、優秀ですよ。でも、そのかわり、選考のために現地に行って頂く必要があります" と提案して、実施してもらうという流れです。
とはいえ、毎年同じ国で採用していると、その部署の国籍比率がおかしくなってしまうので、Diversityの観点からも、毎年部署ごとに訪問する国をローテーションするように心がけています。
ーー現地で選考を実施するときは開発トップも入るのですか?
小山 はい。面接時はだいたい5人程度で訪問することが多いです。HRから2人、開発部門から3名程度ですね。
開発部門の3名の内訳としては、決定権を持つ開発部門の役員の方、それとポジションマッチングやカルチャーフィットを行うシニアマネージャー、そして技術面を判断するエンジニアリーダーのような組み合わせが多いですが、ポジションに応じて採用のやり方は柔軟に対応しています。
実はとてもスマートで贅沢な1カ国1ポジション(部署別)採用
ーー5人グループといっても、1カ国だと、それほど工数は掛からない・・・?
小山 そうですね、採用コストという観点では、成果報酬型、パッケージ型(固定額)という2つのやり方があると思うのですが、私たちはだいたいパッケージ型を選択することが多いです。
例えば、一回の採用活動に数百万円かかることもありますが、多く採用できれば、日本国内での採用単価よりも安くなることもざらにあります。
損益分岐点としては「一か国から5人以上採用」という目安を置いています。
また、移動日2日、選考2日の合計4日間程度かかりますが、たった、この4日間だけで、1年間の採用が終わるんです。
しかも、ホームページ応募で1人ずつ選考しながら、「この人どうかなぁ? 他に応募がいないから採用するかなぁ?」と悩むより、同時に、数十人の優秀なエンジニアを比較しながら選考できるので、感覚としては、とても贅沢なんです。
結果的に不採用としてしまう方も多くいますが、彼らに何かが足りない訳ではなく、予算さえあれば全員を採用したいくらいのレベルの方たちから厳選して採用することができます。私たちは、これを "上積み採用" と言ってます(笑)
ちなみに、話がそれますが、海外でこれが出来るのであれば、日本でも同じスキームで出来るよね、、と言って、逆輸入して始まったのが、"楽天アジャイル就活" です。
ーーなるほど!! それがスタートだったんですね。
採用コストは min 17万円/1人 もある!
ーーとは言っても、国によってはなかなか応募が集まらないなどあると思うのですが?
小山 採用人数次第ではあると思いますが、5名採用の場合は、だいたい説明会参加が100名、そこから現地で面接させて頂く方を30名くらいというのをざっくりした指標として置いています。
10名採用したいなら、これを倍にして考えるというものになります。
ーーということは、これが当てはまる国は結構、限られるのではないですかね?
小山 そうなんです。 なので、結果的にインド、シンガポール、香港、台湾等が多くなりますね。 実は最近、英語だけでなく、日本語も必要とされるポジションが増えてきて、海外での採用が更に大変なことになってきています。。(笑)
ーー小山さんから見て、インド、シンガポール、台湾などは人材の遜色という点ではいかがですか?
小山 何をもってそれを測るか、というところなんですが、技術力の面では国による傾向のようなものは特にないと思います。(流行りの技術、、のようなものは国によって多少違うことはありますが。)
楽天はアジアの会社ですし、カルチャーマッチという点ではアジアの方とはフィットしやすいと思っています。もちろん、部署によってはトップが海外の方であったり、多国籍な部署も多いので、一概には言えないですが。
ーーなるほど、そうなんですね。 ちなみに、聞きにくいところですが、パッケージ1人あたりの採用コストはどれぐらいなんですか? 企業秘密かもしれないのですが。。
小山 海外での採用の場合はパッケージ型が多いので、多く採用できれば採用できるほど安くなります。
過去にとある国からは40名程度ご入社いただき、結果的に優秀なエンジニアの採用単価が17万円、ということもありました。
ーうわーーー、それはスゴイ
小山 それで世界Top20レベルの大学の、コンピューターサイエンス専攻の優秀な学生が採れますからね。
欧米の採用はインターンが前提
ーーその一方で、欧米からの採用は厳しいのですか?
小山 応募はそれこそハーバードなどから人数もそれなりにあるのですが、、ただそこからの入社のハードルが高いです。 給与格差などもありますし。
ーーこれは色々をやってもできなかった感じですか?
小山 それもありますし、欧米の場合はインターンからの採用が大半なので、その違いがあると思っています。
今はこのインターンを強化して、インターンに来ている間に、会社はもちろんですが、日本という国にも少しでも興味を持ってもらい、優秀であればオファーを出す、ということを意識してやっています。
また、インターンでは極力、入社したときの生活に近付けられるよう、家賃含め月30万円(楽天の新卒初任給と同等程度)というのを意識しています。 インターン時だけ高給にしても、定着が難しいように考えています。
ーーインターンは日本で?
小山 はい、渡航費等は楽天が負担して、海外から3か月程度の長期インターンで40人ぐらいを受け入れています。
受入方針は "マイノリティを作らないこと"
ーーでは、インターンも含め採用後、受け入れというフェーズがありますが、こだわっていることは、どのような点ですか?
小山 先程、同じ国で5人採用する、という話をしましたが、これにはもう一つこだわっている点、というより、ここがいちばんデカいという点があります。
それは、5人を同じ国で採用すると、繋がりができ、辞めにくい、というのがあります。
ーーなるほど!
小山 多くの日本企業で、海外採用が失敗するのは、試しに1人海外採用してみたんだけど定着しなかった、というのが結構あって、よくよく聞いていみると、年齢高めなおじさん何十人いるという部署に、その海外の人1人を配属したとかで、”そら辞めるわ” と思います。
ーー確かに。 この "1カ国で5人ぐらいを同期で採用する" という知見は元々あったのですか?
小山 最初に中国で採用を始めたときに5人ぐらい採用したのがキッカケです。
もちろん、現地に行ったんだから、1人の採用じゃもったいなから、という腹づもりがあったと思うのですが(笑) 結果的にはそれが良かったのでは思っています。
なので、出来るだけ同じ国で住む家を近くにしたり、HR主催で飲み会を主催したりしたいして、インターン生同士の横のつながりを作ることを意識しています。
これって突き詰めて考えると、 "組織の中でマイノリティを作らない" というのが一番大事だと思うんです。
国籍のこともそうですし、男女のことも同じなのかな、と。それが組織にとって正解で、ダイバーシティに繋がっていく、と思っています。
次回予告 !!!
楽天さんが海外エンジニア採用をはじめるキッカケや、実際、どのように海外で採用活動をしているのか、始めたばかりの頃の泥臭い話、貴重な失敗談などを伺えました。
また、受け入れるときには "マイノリティを作らない" ことというのは個人的にとっても刺さりました。
次回は海外エンジニア採用でのベンダー選びや学生の活動、そこから見えてくる日本との違い、そして実は、採用方針を大胆に変更されていたことを、お届けします!!
次回もお楽しみに!!
Happy Hiring !!!
OSSにコミットし始めて、とてもいい感じのSpeeeさんに取材してきました!! 後編
前回からの続き
前回は、Speeeさんが企業としてOSS開発に取り組みはじめて、最初は社内も戸惑ったけど、外部のOSS開発専門家の力を積極的に活かして、開発も活発になり、アウトプットが以前より増えました、というお話でした。
今回はそのOSS開発が活発になって、HRにどのような効果があったのか、というお話です!!!
取材に応じて頂いたお二方
- エンジニア組織推進室
中野 賀奈さん
(インタビュアー:広瀬)
OSS開発にコミットすると採用に効いた!!
HR的には "OSS開発にも積極的に取り組んでます!" というと返信率が上がった!!
ーーでは、どちらかエンジニア中心のお話から変えて、企業としてOSS開発にコミットすることで、HR的によいことはありましたか?
中野 単純にブログ更新やOSSのコミットが増えたので、エンジニア向けのPRとして出せる引き出しが増えました。
あとはHRの実務でも効果があって、採用活動でスカウトを送るのですが、会社のサポートのもとOSS開発が出来るということで、OSS開発に興味がある人のスカウトの返信率が上がってますね
ーーそれはだいぶ業務負担が軽くなりますね!! あるHR担当に伺うと、朝から晩までスカウトしてるという話も伺いますし
中野 OSS開発におけるエンジニアへのサポートも変わってきて、前はオンラインでのサポートがメインだったのですが、それでは遠慮するメンバーもいたので、外部のOSS開発専門家にラウンジにお越しいただき、オフラインでもお会いできるようになって、気軽に相談できるようになりました
“speee” というキーワードで 50 ブクマ以上ついた記事の数が2年で4倍
ーーHRもハッピーですね!! で、実は私も取材前に、はてなブックマークで "speee" というキーワードで50ブクマ以上ついている記事がどれだけあるか、調べたんです
一同 へーーー
ーーはい、で、結果は、
- 2014年度(2014/04/01 ~ 2015/03/31)は ゼロ、
- 2015年度(2015/04/01 ~ 2016/03/31)は 7、
- 2016年度(2016/04/01 ~ 2017/03/31)は 18、
- 2017年度(2016/04/01 ~ 2017/10/13)は 27、
と年々に上がってたんです!!
一同 (拍手) いいペース!!!
畑中 書いてるだけじゃないぞ、というのが出ていいですね
中野 質・量ともにいい感じです!!
ーー結構、50ブクマ以上つく記事はあまり無いので、いいですね~
中野 実は100ブクマ以上つくと、インセンティブ、というか豪華ランチに招待されるんです。井原さんに招待されるので、 "イハランチ" と呼ばれています
ーーイハランチ! いいっすね
畑中 イハランチ、いいですよ。私はジョエル・ロブションに行ってきました!!
ーーわー、ジョエル・ロブション、眺めるものだと思ってました(笑)
畑中 六本木ヒルズにあるジョエル・ロブションでランチに行ってきました(笑) まさか行けるとは思ってなかったのですが
HRもエンジニアの世界に飛び込む!!
HRも週1回勉強会に参加することを8ヶ月継続!!
ーーで、HRの中野さんにぜひ聞いてみたかったのが、先日行われたRubyKaigi (筆者注:国内最大のRubyカンファレンス) でHRの方々が参加しているように見受けました
中野 そうですね。参加していました
ーー技術カンファレンスにHR担当が参加する、というのは一般的になったのでしょうか?
中野 力を入れている企業はどんどんそうなっているな、とは思うのですが、一般的かというと、まだ少ないと思います
ーーとなると、行こうというキッカケは何かあったのですか?
中野 私が所属するエンジニア組織推進室というのは、エンジニア採用や広報、組織づくりがミッションなので、エンジニアについて知る為に行ってみようと思ったのは自然な流れでした
ーーなるほど、部署のミッションなんですね。そのエンジニア組織推進室は、どういう経緯で作られたんですか?
中野 私がちょうど入社したぐらいで立ち上がった組織で、エンジニア採用をもっと強化していこう、という方針が掲げられていました。
ただ、その前にまずエンジニアの方々のSpeeeの認知度を高めなければならない、となり、高めるためにはどうするのか、ということで、先程のブログの更新であったり、OSS開発推進であったり、イベントに出展したり、主催したりと、役割が広がっていきました
ーー実際、エンジニア向けのカンファレンスやイベントって、めっちゃ独特じゃないですか。馴染めました?
中野 最初は衝撃を受けたんですが、勉強会に1ヶ月13回行ったこともあって、、、
ーーえ、、、1ヶ月13回?
中野 自社の会場で開催されているものだけじゃなく、他の会場にも行って、イベント運営の勉強として行ってました。で、それを自社開催にも取り入れようとしていました。
逆に、今は一般女性向けのイベントに参加しても違和感でしかないですね (笑)
ーー逆に(笑)
中野 エンジニアの方々の独特の雰囲気とかが普通です(笑)
ーーとは言え、めっちゃ独特なので、最初、抵抗感とか無かったですか? 私は初めてエンジニアの勉強会に参加したとき、抵抗感しかなくて
中野 確かに、申し訳なさみたいなものはあって、怒られないかな、と思いながら、懇親会とかにも参加して、技術をかなり教えてもらったりと、、、
畑中 え?
ーーえ、え、え、懇親会にも参加していたんですか? 結構、誰と何きっかけで話そうとか、めっちゃハードル高いのに?
中野 「イベントを今後、開催したり運営するので、テーマの技術とか教えてもらえないですか?」 というのを懇親会で質問してましたね
畑中 中野さん、その辺、ちゃんと上手くコミュニケーションできそうですね
ーーつ、強い!!
中野 そうですね、強かったかも知れません(笑)
HRが勉強会に参加しても楽しい!!
ーー勉強会やイベントに参加されていて楽しいですか?
中野 実際、分かる単語が増えていくし、プロダクト開発よりの話とかは聞いていて面白いですね。なので、今は勉強会に参加して、知らない用語や動向とかを聞きに行く、という感覚です。
あとは、言語やコミュニティとかによって、来てるエンジニアの方々の雰囲気とか違いも分かって、楽しいですね
ーー勉強会に行きはじめて、どれぐらいで今のような知識になったのですか?
中野 1ヶ月13回というのはその月だけでしたけど、週1回はコンスタントに参加しています。8ヶ月はそのペースを続けました。
最近は自社で開催されるものも増えましたので
ーーでは、今ではエンジニアっぽく markdwon (筆者注:簡単な記法で文章を構造化して書けるマークアップ言語) とかも使ってとか?
中野 実際、社内の採用管理ツールも内製していて、それをGitHubで運用しているので、issue も markdwon で書いたりしています!!
畑中 それはスゴイですね
経営トップもビジネス職もHRも markdown で書く文化に
ーーマジですか。。ウチの社内では浸透しなかったのに。。
畑中 実際、社内では、ほぼみんな markdown で書けるはずですよ。社内的にもKibela (筆者注:markdownで書くのがデフォルト) を全面的に使っていますし
ーーえーー。。
畑中 実際、代表が何かのプレゼンのときに、markdown で発表したことがあって、そこがきっかけになって、みんな markdown で書くようになりましたね
ーートップ自ら。。カッコイイ
畑中 それ以降は議事録とかもそれで書かれるようになって、組織横断的なドキュメントとかも markdown とかで書かれていたりして、見やすくなったのはよいですね
中野 結構、ビジネス側もアンテナが高い人が多くて、何それ、と関心を持つ人が多く、聞いてやってみて、というのが多いですね
畑中 もちろんkibelaで全社共有しているので、営業の人とかがプレゼンモードで発表してたりします
ーーそれも格好いい。。
ビジネスにも好影響
ーー実際、OSSをはじめとしたエンジニア文化の普及で、ビジネス側には影響がありましたか?
中野 効率化とかを考えるようになったのが一番、身近な例ですね。何回も同じことをやっていると、これ自動化出来ないんだっけ? という発想がよく出てきました。
例えば、Slackのインテグレーションを使って、簡単なスクリプトを書いて自動連携をやるとか、ちょっとしたハックもやるメンバーも出てきました
ーーおおー、それはスゴイ! そうなるとエンジニアも働きやすくなってきてますか?
畑中 そうですね
今までだとエンジニアは技術全般を担うことが多かったのですが、最近ではSQLやBIツールなどをエンジニア以外の方が使用されるようになりました。
それによりエンジニアはよりプロダクトの開発に集中できるようになりました。
"OSSやるぞ!!" エイヤではなく、継続することが大事
ーーでは、これからOSS開発に取り組もう、としている企業の方々に、こうした方がいいよ、こういうことは気をつけたほうがいいよ、とかあれば、お願いします!!
畑中 やっぱり、"OSSやるぞ、じゃ、よろしく!!" というトップの方向だけでは、現場は何から手を付けるか戸惑って、進まないと思っています。
そうではなく、自分が普段使っているライブラリの改善やドキュメントの修正とかから入るほうが、より取っ付き易いし、進めやすいと思ってます
ーー逆に、気をつけたほうが良い点は?
畑中 やっぱりライセンスとか、ちゃんと分かってないと問題になります。
そのOSS開発への参加方法やライセンスとか両方を学べるのが、OSS Gateのワークショップなので、一般向けのものに参加してみるだけでもよいと思います。
あと、OSS特有の文化のようなところもあって、それもスグに聞けますし
ーーありがとうございます! では、HR目線では?
中野 覚悟をもって取り組む、ということが重要だと思っています。
HRにとっては、一般的ではない特殊な領域に飛び込む、ということになるので、いきなりそこで高いハードルを感じてしまうと思います。
そこで、持続的にやれる目標を立てて、継続していくことが重要で、実際、それを積み重ねたお陰で、SpeeeはOSS開発に取り組んでます、技術力向上に取り組んでいます、と自信を持って言えるようになりました
ーーとても良いお話、ありがとうございます!! では、最後に告知的なものがあれば
中野 そうですね、やはり Speee はRuby/Railsにコミットしている企業なので、それを使ったサーバーサイドの開発や、Rubyのエコシステムにコミットしたいエンジニアのご応募をお待ちしています!!
また、興味を持たれた方は、Speee DEVELOPER BLOG をご覧いただいて、ぜひ雰囲気や取り組んでいる技術や解決している問題を知ってもらいたいです!!
ーー今日は貴重なお話、ありがとうございました!!!
一同 ありがとうございました!!
取材してみて
エンジニアが入ってみたい、と思えるような企業、文化にするということが、一番時間が掛かるけど、一番効いて、その波及効果でビジネス側にもいい影響をもたらす、ということがわかりました。
(弊社の採用もでやっていくぞい!)
そのキッカケとして、OSS開発に参加することはとても良い、と言えそうです。
その一方で、OSS開発やろうというかけ声だけでは、なかなか難しいことも分かりました。
それを乗り越える上でも、継続が大事ということがわかったので、例えば、プレミアムフライデーで社内でOSSに関するワークショップを定例開催する、というのも良いかもしれませんね。
(実際、OSS Gateワークショップは奇数月の最終土曜日と開催日が決まっています)
また、テクノロジーに経営資源を集中するという判断をした経営陣や、新しいもの好きなビジネス側の方々の技術への取り組みが、エンジニアのハッピーにもつながっていて、Happy Hiring!! という観点で、理想的な姿だなぁと思えるインタビューでした。
Speeeさん、畑中さん、中野さん、ありがとうございました!!!!!
OSSにコミットし始めて、とてもいい感じのSpeeeさんに取材してきました!! 前編
取材にあたって
取材の狙い
エンジニア採用で使う19の募集チャネルの中の一つ、OSSをテーマに、いまOSSへの取り組みがとても話題になっているSpeeeさんに取材をお願いすると、よいですよー、という快いお返事!
早速、行ってきました!
(繋いでいただいた須藤さん、ありがとうございます!!!)
取材の狙い:募集チャネル:自社OSSの公開 の施策を取材したい
取材に応じて頂いたお二方
- エンジニア組織推進室
中野 賀奈さん
(インタビュアー:広瀬)
最初は “Ruby、OSSやるぞ” に戸惑う社内
ーー今日は社内表彰式前の忙しい時間にありがとうございます!!! 今日はよろしくお願いします
畑中 よろしくお願いします
中野 よろしくお願いします!
ーーでは、早速、開発者個人がOSS開発に取り組むのは一般的ですが、企業がOSSに取り組むのはまだ珍しいと感じてます。その中で、Speee さんが取り組む背景はどのようなものなのでしょうか?
中野 3つあると考えています。
1つは、弊社がRubyを使って開発していて、使うだけでなく、その発展に貢献していこう、という動きが出てきたのが1つめです。
2つめは、OSS開発に取り組むことで、社内だけでなく、社外からのフィードバックがあるので、それをもとに技術力のアップに繋がるのではないか、と考えるようになったのが2つめですね。
最後に、"社内に閉じない開発部" という方針を出していて、積極的にオープンに外部のエンジニアの方々のお力をかりていこう、というのがあって、それも背景にあります
ーーなるほど。いろいろ掘り下げたいお話が出てきました! では、まず、、、1つめのRubyにコミットというお話で、OSSというと割りと使うだけでとどまることが多いのですが、そこに貢献していこう、となったのは何かあったのですか?
畑中 さっきの "社内に閉じない開発部" とも関連するのですが、大きなキッカケとなったのは 井原正博さん (筆者注:元クックパッド技術部長、株式会社ビットジャーニー代表取締役、関連記事1参照) が顧問に就任されたことかなと思っています
- 関連記事1: 顧問就任のご報告
それ以降、井原さんが毎週のエンジニアミーティングで、アウトプットして、OSSをはじめ世の中に還元していこう、というメッセージをずっと出し続けていて、そこから徐々に、徐々にとですが、意識として刷り込まれていったように思います
畑中 また、井原さんが顧問に就任した影響で、藤吾郎さん (関連記事3参照) や 村田賢太さん (関連記事参照2) にジョインしていただきました。また、須藤功平さん (関連記事4参照) など外部の専門家を招聘することによってOSSに取り組む上で、とてもエンパワーされましたね
- 関連記事2: 株式会社 Speee に Ruby コミッターとして入社しました
- 関連記事3: 元クックパッド 藤吾郎氏が技術顧問に就任いたしました。
- 関連記事4: OSS開発支援サービス事例:SpeeeさんのWebapp Revieee
ーーおお、、錚々たる方々。。ビットジャーニーさんというと、今だと Kibela (筆者注:社内ドキュメント共有ツール) の?
畑中 そうです、そうです! 全社でも Kibela をめちゃくちゃ使ってまして
ーー実は私もです!(笑) では、その井原さんの発信もあって、スムーズにOSSの開発は社内に広がっていったと?
畑中 意識としては徐々にですが。 ただ、もともとオープンに開発していた訳ではなく、最初はやっぱり実際の活動に繋がらなかった印象です。
また、社内にはOSS開発に対して、違和感のようなものがあるように見えていました
ーーそれはどんなものでしょう?
畑中 そうですね、その違和感の中でも、大きく挙げると、"OSS開発は業務ではなく、時間があるときにやるんでしょ" ということと、"どこから始めたら良いんだろう" というのがあって、特に、2つめの "興味があってやってみたいけど、何から始めたらいいんだっけ?" というのが壁として大きく、モヤモヤとしていました
OSS開発のモヤモヤを払拭した社内のワークショップ
ーーなるほど。そのモヤモヤは深そうですが、どのように解決したんですか?
畑中 そのモヤモヤを払拭できたのは、先程の須藤さんが始められたOSS Gateというコミュニティで行われているワークショップを、Speee社内だけで開催したことですね
ーーほうほう! そのワークショップはどんな経緯で開催となったんですか?
畑中 このワークショップは、OSS開発に興味はあるけど参加出来ていない、というエンジニア向けに最初の一歩を踏み出すキッカケを作る、という目的で開催されていて、普段は一般向けに開催されています。それを須藤さんが提案して、社内でやってみよう、となりました
ーーたしか、そのワークショップが企業内だけで開催されたのは初めてだった気がしますが、、ちなみに一般向けとは変わりない内容ですか?
畑中 そうですね。何か開発するぞ、という訳ではなく、一般向けと同じで、普段、自分たちが使っているRubyのライブラリとかを題材にして、簡単なタイプミスやドキュメント修正も含め、改善できるところを探して、issue をあげて、それに対する改善フィードバックを出して、という流れを一日かけてやりました
ーーそのワークショップでモヤモヤは解消できたと?
畑中 そうですね。そのワークショップで、こんなところから始めていいんだ、という意識に変わり、普段、自分たちが使っているOSSで開発に参加するやり方を学べたので、それ以降は参加した個人個人がドンドン進めていきました。
そこからですかね、
「OSSにフィードバック出したら、取り入れられたよ」
「おお、いいね!
」
というやり取りが日常的になってきて、いまでは開発文化として定着したように感じますね
中野 その辺を弊社の Speee DEVELOPER BLOG の記事、OSS Gate in Speee にまとめていますので、ぜひぜひ(笑)
ーーそれはとても助かります!!! 参考になります (笑) (そのまま使わせていただきました!!)
OSS特有の問題を、OSSポリシーを定めて、エンジニアの悩み事を少なくした
ーーそこからめっちゃ進捗したと?
畑中 そのワークショップを開催したあとに、GitHub上の組織アカウント、Speeeでやっていこうとなったのですが、そのあと、実は、
「業務と関係あるといえばあるけど、どこまでのOSSを対象にしていいんだっけ?」
「あれ、これ業務中にやっていいんだっけ?」
「公開するときのライセンスってどうするんだっけ?」
「Copyrightは会社? 個人??」
という戸惑いが顕著になってきました。そこで、Speee社内のOSSポリシーを作りました
ーーなるほど、それは便利ですね! そのポリシーの内容、深掘りしたい(笑) それは社内で作ったんですか?
畑中 そのエンジニアの戸惑いみたいなものをうけて、先程のワークショップ開催の直後ぐらいから作成が進みました。原案は、先程の技術顧問の藤さんに作ってもらい、それをもとに社内のエンジニアと藤さんやOSS開発にコミットし続けている専門家の方々に相談しながら策定しました
ーー内容としては、業務中に取り組む決まりとかオープンソースライセンスが大きく占めるものなのですか?
畑中 基本はそうですね。開発に取り組む対象は業務と関連したものにしましょう、とか、Copyrightを個人の所属にして公開してよいのはこういう場合とか
ーー確かに、企業で取り組む場合、オープンソースライセンスとCopyrightは難しい問題ですね
畑中 社内でOSSを開発したとして、Copyrightを企業にするのか、作った開発者にフォーカスを当てるのかは、どの企業でも悩むポイントのように思います。
そのSpeee OSSポリシーの中には、業務中に開発したOSSは、Copyrightを "企業 and 個人" にしようね、とかが定まっているんです
ーーそんな権利の付け方ができるんすね!!
畑中 そうなんですよ。この辺のオープンソースライセンスとCopyrightの問題はとても重要で、それによって公開したOSSのユーザーが困ってしまいます。
このようなOSS特有で悩むところを、須藤さんや藤さんのようなOSSの専門家にスグ相談できる環境がSpeeeにはあるので、悩みごとが減り、エンジニアは純粋に開発に取り組めますね
ーーエンジニアからすると何とも羨ましい環境ですね!
そもそもは経営トップの "テクノロジーカンパニー" 宣言
ーー 一方でOSS開発は、ビジネス側からすると、謎のかたまりのようなもので、あまり理解しにくそうですが、そのあたりは何かありましたか?
畑中 所属している事業部で見ている範囲だと、そこは何も感じなかった、ですね。
Speeeの開発では、何か上から言われて作る、というものではなく、エンジニアが主体的に開発を進めていて、実際、上から "そんなOSSの修正とかはやらんでよい" みたいなことは言われたことはありません
ーーそれは珍しいことのような気がします、、
畑中 ひとつにはSpeeeのビジネス側の技術の理解が進んでいることもあると思っていて、例えば、先程の井原さんが、社内で非エンジニア向けのプログラミング勉強会をやっていました
中野 今はもうやってないですが、前はちょくちょくやっていましたね
- 参考: 実際の非エンジニア向けプログラミング勉強会の題材 speee/programming-workshop
畑中 その勉強会などを通じて、エンジニアってこんなことしているんだ、という理解も深めてもらいました
中野 あとは明確に、経営トップ層がテクノロジーカンパニーとして事業を進めていくぞ、と方針を出したこともあって、ビジネス側に大きなハレーションがあったということも無かったですね
ーーというと、そもそもを辿ると、経営トップ層の判断もあると?
中野 そうですね、OSSもそうですが、技術力を上げていくことに取り組むぞ、という判断が経営トップ層にあって、それが先程の井原さんの顧問就任などに繋がっています
ーーこれまた珍しい判断な気がしますが、その経営トップ層の判断は何か過去の成功体験に基づくものなんでしょうか?
中野 ではないですね。Speeeは、もともと営業力や分析力などが原動力として成長してきたのですが、これまでにない速度で成長しようとすると、よりよいサービスを作ることが必要で、そのために技術力アップが必要だ、という判断が経営トップ層にあったんです
畑中 そうですね。それで、ときには井原さんが全社員が集まるミーティングで、エンジニアがどんなことをしているのか話してもらったりだとかを積み重ねて、徐々にエンジニアや技術という、謎のベール(笑)をどんどんはがしていってました
バックオフィススタッフがRails Girlsにも参加!!
中野 そういうのもあって、半年に1度開催しているSpeeeKaigiというエンジニアによる技術プレゼン大会(関連記事5) には、そこで発表するエンジニアを応援しに、所属部門のビジネス側のメンバーも見にくるんです
- 関連記事5: SpeeeKaigiを開催しました(半年ぶり三回目)
ーーえーー、マジですか
中野 そうなんです。営業をはじめ、事業トップも応援しに来たりするんですよ。見ていてすごくあったかい空気を感じました
ーーなんですか、そのエンジニアパラダイスな話は。。
中野 最近だと、バックオフィスをやっている女性メンバーがそういう姿をみて、Rails Girls (筆者注:Ruby on Railsを使って、はじめてWebアプリを開発する女性を支援するイベント) に参加したこともありました。本人に聞くと、別にエンジニアになりたい訳ではなく、興味があったからという理由なんですが。 全社的にそういう技術への関心が高まってますね
ーーめっちゃ、ええ話です
OSSにコミットするとエンジニア育成にも効く
ーーでは、冒頭の、OSS開発することで外部からのフィードバックをもとにスキルアップに活かす、という話を深掘りしていきたいんですが、何か変わりましたか??
畑中 そうですね、アウトプットする量は増えました。あと、その量にともなって、個人ブログも昔は3ヶ月に1本書くぐらいだったのが、OSS、Rubyにコミットするようになって、最近は週1~2ぐらいの更新頻度になってます。
井原さんのアウトプットしていきましょう、というメッセージが浸透してきました
ーー実際、畑中さんはRubyをはじめ、OSS開発することで、スキルアップに繋がっていますか?
畑中 難しい質問ですね(笑) スキルをどう評価するか、というところもあるので。。
感じていることでいうと、やれる幅が広がってるように思います。
今までだと、業務に直面する課題に対してプログラムを書くことだけだったのが、より広いユーザーがいるOSS開発をやることで、自分の選択肢が増えているように感じてます
ーーなるほど。。取材前に畑中さんのGitHubアカウント (hatappi) も見たのですが、2015年ぐらいから個人でOSS開発を始めいて、その当時からも変わりました?
畑中 2015年当時のものは本当に単なる保存場所みたいなものでした(笑) 特に公開するぜ、みたいなものは無かったです。その意味では先程のワークショップ以降、2016年以降からが本格的な活動です(笑)
ーーでは、実際OSSを公開してから、フィードバックが寄せられるようになって、スキルとして変わったものはありますか?
畑中 考慮すべき勘所を掴みやすくなったということは言えます。
さっき出てきた話のように、業務だとどうしても問題解決できて動けばいいや、という部分があったのが、OSSの場合、ユースケースが広いので、フィードバックをもらう中で、その使い方だと確かに上手いこと動かないことがあるな、とか気付くことがあります。
なので、より使う人が増えるのに伴って、考慮すべき点が増えていって、その勘所が分かるようになってきました
ーーそれは自社の開発業務にも活きてきそうですね
畑中 そうですね。割りと、この変更を加えたら何が起こるか、みたいなことを、より広い視野で考えられるようになってきました。あとは開発するときの意識も変わりましたね。
ーー意識、、、ですか?
畑中 今までだと、業務で使っているOSSにバグがあって、エラー吐いた場合って、何とか回避して進めていこう、となっていたのが、自分たちだけじゃなく、他のエンジニア達も困ってるよな、だったら直しちゃえばいいよね、とフィードバックする意識に変わってきました。
この意識と技術、という2つが、大きく変わったところですね。
ーーカッコイイ。。めっちゃHR的にもスキルアップに効いてますね!
中野 そうですね!
Rubyをもっと良くする、ということでデータサイエンス領域で開発中 !
ーー最近だと、畑中さんは、村田さんや須藤さんも参加しているRubyのデータサイエンス領域の活動の一つ、Red Data Tools でも活躍してらっしゃいますが、これは企業としての方針ですか?
畑中 これはデータサイエンスが好きとか、そういうものではなく、どちらかと言うと、Rubyをもっと良くしていこう、という方が強いです
ーーでは、企業としてデータサイエンス領域に強みを発揮しよう、というわけではなく、Rubyをもっと良くする、というモチベーションなんですね
畑中 そうですね。あと身近に、その村田さんも側にいたことで、その辺のお話も聞けるようになって、それで面白そうだなと思って、今、参加しています
- 補足: 畑中さんが中心になって開発が進むOSS、Red Cahiner // 国産のPython製ChainerのRuby版
- 補足: 村田さんが開発している、Pythonのデータサイエンス系のライブラリを、Rubyからも使えるようにするOSS、PyCall
次回予告 !!!
Speeeさんが企業としてOSS開発に取り組むきっかけとなった経営トップ層の判断から、実際に取り組み始めたときの戸惑い、その戸惑いを、外部のOSS開発専門家の力を活用して、解消して、OSS開発やアウトプットが活発に進んでいる様子をお伝えしました。
次回はそのOSS開発が活発になったことで、実際、HRにどのような効果があったのかお届けします!!
次回もお楽しみに!!! Happy Hiring !!!
募集チャネルで取材してみ、、、てなくて、取材したいことをまとめました !!
Happy Hirirng!! のお詫び
結論、エンジニア採用で使う募集チャネルの取材はできませんでした。。 :bow:
今回の進捗はありません。。。。
とはいえ、何かしら発信しなければ、願いは叶いません。
なので、特に取材したい内容を、図々しくもまとめてみました!!
厚かましい取材のお願い
お願い一覧
- 募集チャネル:技術ブログ の施策を取材したい
- 募集チャネル:自社OSSの公開 の施策を取材したい
- 新しい募集チャネル:海外採用 の施策を取材したい
- 募集チャネル:技術コミュニティへの貢献 の施策を取材したい
取材の狙い
詳細はそれぞれの Issue に書いていますが、エンジニアにとっては当たり前のように思えることでも、採用やその他ビジネス職からすると、なぜやるのか分からない、と思うところを深掘りしたいなぁ、と思ってます。
例えば、私自身も、OSSがなぜ、これだけエンジニアを熱狂させるのか、謎だったことを覚えています。
(そのときに自分なりに考えた答えは書き留めていました ↓
なお、今は↑で書いたように名誉ゲームもモチベーションの一つとは思いつつ、普段OSSを使っていて不便だから直しているという方や、例えば、食事してお皿を使えば洗うでしょ、それと同じだよ、という方々にもお会いして、なるほど、わからん、となっています。
というわけで、、、
図々しいなぁと自分でも思いながら、もし↑のチャネルで施策やってるよ~、という企業さまがいらっしゃれば、ぜひぜひ Issue に書き込んでいただくか、第1回の連載で載せたアカウントまでお気軽にご連絡下さい!!
また、並行して、こちらからもお声掛けしてますので、ぜひぜひご検討よろしくお願いします !!!
次回に向けて
次回は、取材->記事化が間に合えば、それを載せます!!
もし間に合わなければ、前回まとめた弊社のエンジニア採用の施策の状況をまとめます!!
では、今回に懲りず、、、また来週お楽しみに!!
Happy Hiring!!
弊社エンジニア採用で使う募集チャネルごとの施策を作ってみた
これまでのHappy Hiring !!
- 募集要項テンプレートを作って、弊社エンジニア採用の募集要項を作りました
- エンジニア採用で使う19の募集チャネルを考えてみました
今回は前回の募集チャネルで公開した Happy Hiring !! 用のブルズ・アイフレームワーク を使い、チャネルごとの施策を考え、弊社の開発チームとともに優先順位をつけて、どこから取り組むか決めました。
エンジニア採用の施策を決めるまでのプロセス
19もの募集チャネルがあると言われても、馴染みがなく、また私たちにとっても初めてのやり方なので、以下のように進めました。
- まず私が19の募集チャネル毎の施策アイデアを叩き台として出す
- 開発チームに事前に見せて、一緒にブレストし、アイデアを膨らませる
- 施策アイデアごとに [コスト] [リーチ確率] [即効性] の項目で評価
- 優先順位を各メンバーで考えて、集計して、まずやってみる施策を決定
掛かった打合せの時間は、2.3 のブレストと評価で1時間、4. の決定プロセスで1時間というところでした。
実際に出てきた19の募集チャネルごとの施策アイデア
実際に出来てたアイデアなどは seplus_hiring_channels に公開していますが、19チャネル分のアイデアがあるため、ここでは抜粋して紹介します。(あくまでアイデアです。。)
募集チャネル | 狙いと施策 |
---|---|
7. 技術ブログ、Qiitaなど | 実際に開発でハマったときに、ググっても解決しにくかったところを綴る -> ex. Riot.js や, php artisan tinker の使い方とハマりどころ -> 自社の開発に関心がある(= ファン層)を作る |
10. ブログ広告 | Laravel公式ドキュメント(日本語版) や ララ帳(更新止まってるけど初心者は通る道) への募集広告掲載 |
11. 近しい企業との合同採用 | まずはLaravel使ってる企業から探そう。。-> Laravel カンファレンスとか一緒にやりたいねぇ (Laravel.Osaka 2016 というのが大きかった様子。世界的には Laracon というのがある) |
16. 勉強会、カンファレンス等でのセッション、CFP、LT | まだ立ち上げ間もない LaraLab とかでのLT登壇を目指そう -> Laravel Tokyo Meetup -> PHP勉強会とかで登壇できるとよいねぇ -> 自社の開発に関心がある(= ファン層)を作る |
18. Podcast | PHPの現場 でスポンサー募集していれば募集要項を出してみる // が、今回の募集に対して、だいぶハイエンド過ぎる。。。 |
19. 技術コミュニティへの貢献 | OSS Gate ワークショップ を特定OSS、PHPやLaravelでやってみる // ちょうど今度のPHPカンファレンスの会場内でやるので参加する -> https://phpcon.connpass.com/event/66822/ |
今回Laravelというフレームワークに寄った施策になっていますが、これは初心者からフレームワークを使って開発をスタートするのが一般的になっているので、今回の募集対象となる初心者層にもリーチしやすいのではと仮説を立てています。
ファン層を作る
アイデアの中に “自社の開発に関心がある (=ファン層) を作る” とあります。
これは、技術ブログ、自社OSS公開、自社ミートアップなどを通じて、自社で取り組んでいる開発技術、開発課題などに対して、 “面白そう、いい感じっぽい” と思ってくれる層を作っておく 、というものです。
とはいえ、即効性は低い上に、継続するのが難しく、さらに集客するのが難しいのですが、この層があると、求人メディア等を使わずともスピーディに応募に繋がることが期待できます。
また、ブログ等を通じて、中の開発の様子を公開することは、候補者が応募を考えたときに、外部から何やっているかわかりにくいからパス、どんなコード書いてるのかわからんからパス、などを少なくとも回避できます。
(見えにくい会社に応募するのは、とっても勇気がいるものです)
弊社エンジニア採用で、まず、やってみる施策を決定
出てきたアイデアごとに、掛かるコスト、候補者にリーチする確率、スグに応募に繋がる即効性の3つの項目を5段階で評価し、ブレストに参加したメンバーごとに優先順位を考えました。
当初、ほぼ同じになるかなぁと思っていると、意見が分かれたので、エイヤで決めなくてよかったです。(ホッ)
メンバーそれぞれの優先順位 1位 ~ 5位 // 1~19位でランク
順位 | 開発リーダー sep-mk | 開発メンバー torigoe | 私 sezemi_admin |
---|---|---|---|
1 | 7. 技術ブログ、Qiitaなど | 12. 人材紹介 | 1. 在籍社員の紹介プログラム |
2 | 9. 自社OSSの公開 | 7. 技術ブログ、Qiitaなど | 8. Twitterアカウントの開設と投稿 |
3 | 8. Twitterアカウントの開設と投稿 | 9. 自社OSSの公開 | 4. Twitter広告 |
4 | 10. ブログ広告 | 15. 自社ミートアップの開催 | 10. ブログ広告 |
5 | 11. 近しい企業との合同採用 | 16. 勉強会、カンファレンス等でのセッション、CFP、LT | 3. 使用技術でSEM広告 |
- (注) チャネル名で表記
ビジネス・営業寄りの私と、バランスを考える開発リーダーと、ドヤってみたい(??)開発メンバーとで、かなり雰囲気が違いました。。 開発チームに聞いてみると、募集するにもその土台から作りたい、という意見が出て、そこはビジネス職とで全く違うものでした。
決まった施策
各メンバーでその優先順位に決めた理由を簡単に説明してもらった上で、単純にその優先順位を合計したもので、まず直近でテストする施策を3つ決めました。
チャネル | 施策アイデア | 備考 |
---|---|---|
7. 技術ブログ、Qiitaなど | Laravel関連でハマったときに、ググっても解決しにくかったところを綴る -> ex. Riot.js や, php artisan tinker の使い方とハマりどころ -> SEプラスの開発に関心がある(= ファン層)を作る |
テーマをまず決めてやっていこう |
8. Twitterアカウントの開設と投稿 | SEプラスのDevチームアカウントを作って、募集更新情報やブログ更新情報を投稿していく | |
1. 在籍社員の紹介プログラム | 募集要項を社員のSNSでシャアしてもらう | 今の募集ページを差し替え / Github上で募集要項を公開してPRで応募ということをやろう |
Happy Hiring !! のブログのネタとしては、、、スグに結果が出にくい施策なので、ちょっと厳しいなぁw と思いつつ、やはり何事にも土台は必要、ですね。
まとめ
弊社のエンジニア採用で、実際に使う募集チャネルと施策を決めました。
そこで、施策の実施時期も決めたので、これから、テスト>反響->ふりかえり->次の施策を決める、ということで進めていきます!
ただ、施策を実施するのに時間が掛かるため、一旦、弊社のエンジニア採用活動を綴るのは止めて、次回は、すでに募集チャネル毎に施策を実施している企業に取材して、レポートできればと考えています !!!!
(お相手がまったく決まってないノープラン状態なので、とても心配です…orz)
(お越しやす! という企業がいらっしゃれば、ぜひお声がけください~~~!!)
では、次回もお楽しみに!!
Happy Hiring !!
エンジニア採用で使う19の募集チャネル
これまでのHappy Hiring !!
- エンジニアの応募に繋がる募集要項テンプレートを作り、開発チームにインタビューしました
- インタビュー内容をもとに弊社のエンジニア募集要項を作りました
今回から2回にわたって、その募集要項を、どのチャネルを通じて公開するのか考えてみます。 1回目はそもそもその前に、どのような募集チャネルがあるのか、考えてみます。
“スタートアップが顧客をつかむ 19 のチャネル”
唐突ですが、TRACTION トラクション という本をご存知でしょうか?
- 作者: ガブリエル・ワインバーグ,ジャスティン・メアーズ,和田祐一郎
- 出版社/メーカー: オライリージャパン
- 発売日: 2015/05/23
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- この商品を含むブログ (1件) を見る
この本は一言で言うと、スタートアップが顧客を獲得するチャネルは、19チャネルあるよ、その19のチャネルで全部施策立てて、優先順位をつけて、順番に小さくテストして、価値検証しながら、効果あったチャネルに集中するといいよ、という本です。(一言ではなかった)
まず驚いたのが、19もあるのか!! だったので、そのチャネルを紹介します。
チャネル名 | 一言紹介 |
---|---|
1. バイラルマーケティング | 口コミを生み出す |
2. PR | メディアへのプレスリリース、寄稿 |
3. 規格外PR | バズるネタを仕込む |
4. SEM | 検索連動広告 |
5. ソーシャル/ディスプレイ広告 | FB/Twitterなどの広告 |
6. オフライン広告 | TV、新聞などの広告 |
7. SEO | 検索エンジン対策 |
8. コンテンツマーケティング | オウンドメディア、ブログ |
9. メールマーケティング | メルマガ等でアクティベート |
10. エンジニアリングの活用 | 製品に繋がる無料のソフト公開など |
11. ブログ広告 | Authorが書くブログなどへの広告 |
12. ビジネス開発 (パートナーシップ構築) | 業務提携など |
13. 営業 | セールスを雇った展開 |
14. アフィリエイトプログラム | アフィリエイト、、です |
15. Webサイト、アプリストア、SNS | アプリ内広告など |
16. 展示会 | イベント出展 |
17. オフラインイベント | 自社イベントの開催 |
18. 講演 | カンファレンス等での講演 |
19. コミュニティ構築 | ユーザーコミュニティを作る |
これをご覧になって、直感的に、あ、これ、エンジニア採用の募集チャネルにも適用できそう! と思えた方、ぜひ一緒にやりましょう。
なお、もしかすると、TRACTION風に取り組んでいるのかもと思った記事がありました。
ソフトバンク・ヤフー・HDE人事責任者が明かした「最先端の採用手法」とは?
他力から自力へ。ヤフーでは母集団を集めるために、以下の方法を使っている。
- テレビCM
- インターネット広告
- プレスリリース
- ミートアップイベントの実施
- オウンドメディア運営
- イベント参加(目的は、採用活動を知ってもらうための活動)
- エージェント(目的は、求人票の配布)
- ダイレクト・リクルーティング
- 社員、内定者の活動(リファラル・リクルーティング)" (上記記事より引用)
TRACTION をもとにエンジニア採用の募集チャネルを考えてみる
あくまでTRACTIONは顧客獲得チャネルなので、エンジニア募集に利用するにはアレンジが必要です。 そこで、私なりに考えてみました!
エンジニア採用で使う19の募集チャネル
チャネル名 | 内容 |
---|---|
1. 在籍社員の紹介プログラム | 社員の友人等を通じた募集。社員の満足度が高いのが必須 |
2. バズる企画とプレスリリース | 話題性のあるネタをリリース(HipHopとかスゴイネタをぶち込む、あの会社さんをイメージするとよいです) |
3. 使用技術でSEM広告 | ex. “Kotlin 転職” などキーワード広告を出す (求人メディアがスゴイので選定注意) |
4. Twitter広告 | アカウントやキーワード指定のTwitter広告で募集要項を出す |
5. 技術雑誌、書籍、メディアの活用 | Web+DB PRESS など月刊誌や書籍、メディアへの寄稿の推奨や広告掲載 |
6. 採用ページ、技術ブロクでSEO対策 | SEMで使ったワードを使用して募集要項を検索上位にする |
7. 技術ブログ、Qiitaなど | どんな問題があって、どんな技術で解決しているのかブログやQiitaで紹介 |
8. Twitterアカウントの開設と投稿 | Twitterを通じて定期的に募集等のアプデ情報を流す |
9. 自社OSSの公開 | GitHubで自社開発のOSSを公開、PRし、使用者->貢献者(=自社技術のファン層)を増やす (ライセンスは注意しましょう) |
10. ブログ広告 | Adsenseなど活用し一般の技術ブログ広告枠に募集掲載 |
11. 近しい企業との合同採用 | 例えば、SREなど職種ごとに合同ミートアップを開催する (市場を一緒に盛り上げるイメージです) |
12. 人材紹介 | 人材紹介やヘッドハンター、個人エージェントを経由して募集 |
13. エンジニア専門の求人メディア | 技術キーワードのタグや候補などを見ると、結構、差があります |
14. 技術カンファレンス | カンファレンスでのブース出展、スポンサーセッションやチラシ、ステッカー配布など |
15. 自社ミートアップの開催 | 自社事例、使用技術の紹介が中心に開催し、自社の開発に興味をもってもらいます |
16. 勉強会、カンファレンス等でのセッション、LT | Ruby,Python,Android,PHP,Perlや最近ではbuildersconなど、大きいカンファレンスでの登壇を指しています。なお、CFPの採択率とか、採用宣伝にかなり効果的です |
17. イベントページでのファン層構築 | connpass、Doorkeeperなどで自社ミートアップを募集すると自然とメンバーが増えます |
18. Podcast | 有名なRebuildをはじめとしたテックなPodcastでの募集情報を発信 (個人的には PHPの現場 、boot.fm などをよく聞いています) |
19. 技術コミュニティへの貢献 | ミートアップ会場の提供や懇親会スポンサー、変わったところではオープンデータの提供 (その際、LTできるか、一度はお願いしてみましょう) |
アフィリエイト(今はない?と思うので数に入れない) | 自社募集要項を載せてくれたブログ等へ報酬 |
ここでは1つ1つのチャネルを詳細に説明できないので、簡単に紹介していますが、もし詳しく聞きたいなどあれば、ぜひコメントください!!
また、長期的に継続すると効果的なチャネル、短期で効果があるチャネルもありますので、いま自社に合わせて優先順位付けは必要です。
ただ、TRACTIONでも書かれていたのですが、このチャネルは使わないな、というものがあっても “チャネルに対する先入観を捨て去る” “狭い範囲でのテスト” が重要だと考えています。(これから自社採用でやりますが...)
例えば、私自身これを書きながら、自社イベントのチャネルで、自社が使用しているOSSを題材としたOSS Gateワークショップ(はじめてOSSへ開発をコミットする方をサポートするワークショップ) をやるというのは、とても良さそうなアイデアだなぁと思いました。
ブルズアイ・フレームワーク 4 Happy Hiring !!
TRACTIONでも19のチャネルごとの施策を、皆で考えたり、作成したり、マトリックスで評価・決定できるよう、ブルズアイ・フレームワーク と呼ばれるシートを公開しています。
そこで、HappyHiring!! でも19の募集チャネルでやることを整理しやすいよう、スプレッドシートを用意しました!!
- Bullseye_framework_4HappyHiring https://goo.gl/Gy9y94 // Google Sheet にリンクします
ぜひ使っていただき、こうした方がもっと使いやすいよ、などコメントいただけるとうれしいです!!
まとめ
募集要項を公開するチャネルについて、TRACTIONにちなんで、エンジニア採用で使う19の募集チャネルを考えてみました。
実際、そのチャネルでどのように効果があったのか、すでにやってらっしゃる企業がいいらっしゃれば、ぜひ取材に伺ってみたいですね。
では、次回、このブルズアイ・フレームワーク 4 Happy Hiring!! をもとに弊社のエンジニア募集で使うチャネルを考え、決定します。
来週もお楽しみに!! Happy Hiring !!